悩み多き30代OLの日常

のんびりマイペースに日々の生活を淡々と。

人間関係がふわりと軽くなったひとつの行動

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「あのおじいさん、そんなに悪い人じゃないのかも」

 

 

マンションの同じ階に住むそのおじいさんは、とてもおしゃべりだった。

私に対してもエレベーターで会うたびに「最近仕事は忙しいの?」と話しかけてきた。「まだ結婚しないの? 選びすぎなんじゃないの?」と言われたときは、さすがに温厚な私もイラっとしたが、まあ悪気はないのだろうと聞き流していた。

 

 

しかし母は違った。

 

 

「あのおじいさん、いつも人の家のことを根掘り葉掘り聞いてくるのよ。ほんと、デリカシーがない!」

 

母はそのおじいさんのことを、ひどく嫌っていた。

 

 

 

ところが、そんな母がおじいさんのことを上機嫌で話している。

理由を聞くと、それはとても些細なことだった。

 

 

「あのおじいさんがね、私のこと全然60代に見えない、若いって言うのよー。もう、ほんとに口がうまいんだから」

 

 

え! ウソでしょ!? たったそれだけで!?

あんなに嫌っていたおじいさんを、たかが一回褒められただけで許せるものだろうか?

 

しかし思い返してみると、私にもそんな経験があった。

苦手だと思っていた上司から「よく頑張ってるな!」と仕事ぶりを褒められた。

 

 

「なんだ、あの人私のことちゃんと見てくれていたのか」

 

 

自分でもなんて単純なのだと呆れるが、それまで苦手に感じていた上司が急に良い人に思えた。

たった一言褒められただけで、それまで張りつめていた気持ちが、ふわりと軽くなった。それはまるで部屋で優しい香りのアロマを焚いたときのように。

 

 

私も誰かにアロマを焚いてあげたい!

 

 

それからというもの私は積極的に人を褒めるようになった。

 

 

 

「Tくん以前と比べてすごく成長したよね! 皆も褒めてたよ!」

 

最近元気がないと感じていた後輩のTくんを褒めた。するとTくんの表情がぱっと明るくなった。

 

「ありがとうございます! ちゃんと役に立てているか不安だったんです。もっと頑張ります!」

 

聞けばTくんは怒られることはあっても褒められることがなかったため、自分の仕事に自信が持てずにいたらしい。それからのTくんは、以前よりさらに仕事を頑張るようになり、メキメキと実力を伸ばしていった。どうやら褒められて伸びるタイプだったらしい。

 

 

 

先輩Iさんは、最近仕事が立て込んでいてピリピリしている。周りも話しかけにくそうだ。

私は書類をもっていった際、Iさんをさりげなく褒めた。

 

「Iさんってすごいですよね。どうしたらそんなアイデア思いつくんですか?」

 

すると、しかめ面だったIさんの表情がみるみる柔らかくなり「いやいや、そんなことないよ」と照れ臭そうに笑った。気持ちにも余裕ができたのか、周囲と雑談を交わすようになり職場の雰囲気も良くなった。すごい! 効果絶大だ。

 

 

 

しかし私にとって最大の難関が立ちはだかる。

トイレでばったりKさんに会った。

Kさんは私より15歳年上の女性だ。良くも悪くも思ったことをストレートに伝える性格で、打たれ弱い私はKさんのことが苦手だった。Kさんもその空気を察してか、仕事以外で私に話しかけてくることはなかった。

 

そんな関係を少しでも改善したい! 私は勇気を出してKさんを褒めた。

 

「Kさんっていつもオシャレですよね!」

 

Kさんは一瞬戸惑った表情を見せたが、すぐに笑顔になりこう言った。

 

「ありがとう。あなただっていつも可愛いワンピース着ているじゃない」

 

2人の間に優しい空気が流れた。

それから私はKさんと、時々ファッションの話をするようになった。あの時勇気を出して本当に良かった。

 

 

 

人は誰でも、自分を認めてほしいという「承認欲求」をもっている。

褒めることは、相手の承認欲求を満たす行為だ。

しかし年を重ねるにつれて、人から褒められる機会は減っていく。

 

20代の時に「そんなことをやって偉い!」「そんなことが出来てすごい!」と褒められていたことが、30代では「そんなこと、やって当然」「出来て当たり前」へと変わっていく。

周りに年下が増えてくれば「かわいいね」なんて、容姿を褒められることもなくなっていく。

 

だからこそ、減った機会は自分から作ればいいのだ。

人を褒めると、相手から「あなただって……」とお返しの褒め言葉をもらえることがある。意外な相手から意外な褒め言葉をもらうと、その人との距離がぐっと縮まる。

 

人を褒めるということは、相手を知り、相手を認めるということだ。お互いを認め合えば、人間関係はふわりと軽くなる。

 

苦手だなと思っているあの人のために、勇気を出して優しい香りのアロマを焚いてみてはいかがだろうか。